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鳥取

国際獣医学インターンシップ演習(学生の体験談)

 2019年2月上旬、英国ケンブリッジ大学にあるThe Queen’s Veterinary School Hospital(QVSH)にて臨床実習に5日間参加しました。QVSHには小動物病院の他に、産業動物病院、馬の病院、病理診断センターが設置されており、私は小動物について4日間、産業動物と馬について半日ずつ参加しました。日々、新たな発見や学びがあり、目まぐるしい毎日を過ごしました。

 

 最も印象に残ったことは私が鳥取大学で経験した臨床実習とケンブリッジ大学のものが大きく異なることでした。QVSHの小動物分野では内科、整形外科、軟部外科、腫瘍科、神経科、眼科、麻酔科、画像診断科など複数の科に教員やレジデント、インターン生の獣医師が属しており、医療の細分化がなされていました。ケンブリッジ大学の6年生はQVSHで臨床実習を通して座学で学んだ内容を臨床現場で活かす術を学びます。卒業までの最後の1年で小動物臨床以外に産業動物や馬の臨床も含めた10以上の科を経験し、1つの科では約2週間の実習を行うそうです。学生は担当する症例が来院されてから帰宅するまでの全ての過程に携わります。学生がはじめに問診を行い、担当獣医師であるレジデントに対して鑑別診断を提示し、必要な検査項目を提案します。検査を終え、診断や治療方針の決定後はカルテなどの書類作成を学生が行い、1つの症例を終えます。実際の臨床現場で働くことを想定した実習が行われており、とても驚きました。もちろん最初から完璧な学生はいないため、不足部分は教員がフォローをしていました。丁寧に何度も問答を繰り返すことで学生自身が答えを出せるように導くことでフォローしていました。簡単には答えを教えず、試行錯誤する機会を与えられる教育がケンブリッジ大学では行われていると感じました。そのためか、交流する機会があった全ての学生は一つ一つの症例について当事者として責任を持ちながら深く理解しているように感じました。

 

このようにイギリスの獣医療を垣間見る機会が得られ、日本との違いを感じましたが、日本の獣医学教育にすべてを適用したら良いという話ではなく、社会背景が異なるのだから違ってもおかしくないと感じました。イギリスには独自の動物に関する倫理感があり、動物の販売方法や飼養環境、社会問題があります。そして臨床現場で活躍する獣医師が求められており、その軸に沿った教育がなされていました。日本の獣医療は先に発展してきた欧米諸国に倣っている部分が多いと習いました。しかし、日本には独自の課題やニーズがあるので、改めて日本の獣医療はどうあるべきかを考え、軸を設定し、それに合わせた教育制度の再設定が必要なのではないかと感じました。

 

最後に貴重な機会を与えて下さったThe Queen’s Veterinary School Hospitalと鳥取大学の皆様に心より感謝を申し上げます。

 

****国際獣医学インターンシップ演習:共同獣医学科ならではの専門科目(選択)。英国ケンブリッジ大学獣医教育病院を訪問して臨床実習に参加し、グローバルな視点を養うとともに、英語によるコミュニケーション能力を高めることを目的としています。鳥取大学からは5名の学生が2018年度の本演習に参加しました****

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